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「きゃあああ!」
鉱山を模したコースを走るジェットコースターに乗りながら、私は悲鳴を上げた。コースターはレールを上ったり下りたり激しく走っているというのに、
「僕は風になった~♪」
こんな時でも黒川君は歌っている。
「結構怖かったなぁ」
「マリーは怖がりだね~♪」
ドキドキと胸打つ心臓を押さえながらコースターを降りると、黒川君は私を振り返った。
「さあ、今度はどこへ行く?♪」
「海賊の入り江かな」
「マリー、元気がないよ」
ことあるごとに歌を強制されて、私は段々やけくそになって来た。
「海賊の入り江に行きたいな~♪」
「君の望むところならどこへでも~♪」
海賊の入り江に向かう途中でも、彼はスキップをしたり、ターンをしたり、街灯をくるっと回ってみたりと踊りまくっている。行き交う他の客が目を丸くしながら、
「あの子、さっきからずっと歌いながら踊ってる」
「イケメンだけど、変わってるわね」
「よっぽどファンタジーランドが楽しいのかしら。彼女、大変ね」
ひそひそとした会話を交わしている。
(で、ですよね~……)
私は内心「とほほ」の状態だ。
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