夢の国で歌えば

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 迷子センターに辿り着き、まなちゃんのことを係の女性に伝えると、 「では園内放送をかけますね」 係の女性は頷いて、私たちにそう請け負ってくれた。そしてまなちゃんに向かって身をかがめると、 「お母さんが見つかるまで、まなちゃんはここでお姉さんと一緒に待っていようね」 優しく目を見つめて微笑んだが、 「いや。まな、おうじさまといっしょにいる」 まなちゃんは黒川君の手をぎゅっと握り、イヤイヤをするように首を振った。 「まなちゃん、お母さんはここに来るんだよ」  私が諭しても、 「いや」 まなちゃんは首を振るばかりだ。 「困りましたね……」  係の女性が弱っているのへ、 「では、僕が一緒にいますよ。お母さんが見つかったら、スマホに電話を入れてもらえますか」 この時ばかりは真面目に、黒川君が係の女性へ提案した。 「そうですか?」 「ええ。任せてください」  とん、と胸を叩き、キラキラとした笑顔を浮かべた黒川君に、女性はノックアウトされたらしい。 「そ、それでは、お願いします……」  上ずった声で頷いた。目の中にハートマークが浮かんでいるのが見えそうだ。 「さて、お母さんが見つかるまでどこに行こうか?」  迷子センターを出た私たちは、再度まなちゃんの両手を握り、歩き出した。私が行き先を考えていると、 「リトルレディ、楽しい場所へ連れて行ってあげる♪」 黒川君が笑顔でまなちゃんに歌い掛けた。 「えっ、どこ?」 「きっと君が気に入る、楽しい場所だよ~♪」  黒川君が歌うたび、まなちゃんは楽しそうに声を上げて笑っている。
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