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前を見ていなかったのがいけなかったと、反省しながら相手に目を向け、
「ご、ごめんなさい……!」
慌てて謝ると、彼らは私たちを見て、ひゅうっと口笛を吹いた。
「JKじゃん」
「君たち可愛いね」
馴れ馴れしい様子で声を掛けられ、ぶつかったのはこちらだが、思わず警戒してしまう。
「ぶつかって来た詫びとして、俺たちと遊びに行こうぜ」
「カラオケとかどう?」
片方の男性にやにわに腕を掴まれた私は、思わず、
「い、嫌っ!放してください!」
と悲鳴を上げた。振り払おうとしたが、相手の力は強く、びくともしない。
(どうしよう、怖い!)
すると、
「放せって言ってるだろ」
隣から低い声が聞こえ、私を掴む男性の手首を掴んだ人がいた。黒川君だ。
「え、何この子」
突然、凄んで来た女子高生に怪訝な視線を向けたのもつかの間、
「ちょっ、待てっ、痛たた……!」
男性は黒川君に手首を捻り上げられ、悲鳴を上げた。
「行こう、文月さん」
相手が怯んだところで、パシッと私の手を取り、黒川君が駆け出す。
「く、黒川君、どうし……」
「今は走って」
質問を許さない雰囲気で返事をした黒川君の後について走り、私は通りを駆け抜けると、駅の改札口へと飛び込んだ。
さすがに駅の中に入ってしまえば大丈夫だろう。上がった息を整えながら、黒川君に目を向ける。すると彼は私の視線に気づいたのか、
「危ないところだったね、朱音。アイツらマジ最低」
腕を組んで毒づいた。
(あ、男の娘モードの黒川君に戻った……)
けれど、さっき私を助けてくれた時の黒川君は、確かに素の黒川君だ。
(ちょっと、格好良かったな)
そんなことを考えた自分に気づき、
(えっ?待って、私……今何て?)
私は内心で激しく動揺していた。
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