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少しずつ、少しずつ、何かの歯車が狂っていくように、私は黒川君を取り巻くクラスの環境が変わって行っていることに気が付いていた。
一緒にお昼ご飯を食べていても、クラスメイトから、妙な視線を感じる。
「……?」
それが分からないまま数日が経ったある日、いつも通り椅子を5脚用意していた私は、黒川君に肩を叩かれ、振り返った。
「文月さん、今日は俺、中庭で食べるからいいよ」
「えっ?どうして?」
「最近、あいつにかまってやってないと思ってさ」
あいつ、とは、中庭に住み付いている猫のことだと、すぐにピンとくる。
「それなら、後で一緒に行こうよ」
「ううん。文月さんはみんなとご飯を食べていて」
「それじゃ」と言って、黒川君は教室を出て行ってしまう。
「…………」
私が怪訝な面持ちで黒川君が出て行った扉を見つめていると、
「朱音」
香澄に名前を呼ばれた。
「行って来なさいよ。私たちはいいから」
優しい言葉を掛けられ、思わず胸が詰まる。
「うん。ありがとう!行って来る」
私は香澄に手を振ると、中庭へ向かって駆け出した。
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