フォルトゥーナの前髪

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フォルトゥーナの前髪

 クラスの裏掲示板を見てから、私の心中は穏やかでいられなくなった。  教室の中にいると、誰が黒川君のことを悪く言っていたのか、犯人を捜すような気持ちになってしまう。一度目にした悪意のある言葉は脳裏から離れて行ってくれない。 (もしかして香澄ちゃんも?隅田さんも?田辺さんも?……ダメだ、こんな気持ちじゃ)  一緒にお昼ご飯を食べている3人に目を向け、そんなことを考えてしまう自分が嫌になる。そうは思えど、疑心暗鬼が私を苛んでくる。 (黒川君は、こんな気持ちを抱えていたの?)  飛んで行って、抱きしめたい。私が側にいるって。  そう思った途端、私は立ち上がっていた。 「朱音、どうしたの?」  お弁当を食べていた香澄が、びっくりしたように私を見上げる。 「香澄ちゃん。私、早退する」 「えっ!?」  目を見開いた香澄に、 「お腹が痛くなったって、安藤先生に言っておいて」 私はそう言い残すと、カバンを手に取り、教室を飛び出した。
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