女同士のデート

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女同士のデート

 夏休みが終わり、2学期が始まると同時に、ちょっとした事件があった。  始業式の朝、朝礼の時間になると、 「みんな、おはよう」 そう言って教室に入って来たのは、安藤先生だった。みんなが一斉に「あれっ?」という顔になる。  安藤先生は教卓の前に立つと、 「起立」 と号令をかけた。私たちは訳が分からないまま立ち上がり、 「礼」 と頭を下げる。 「えー、ごほん」  安藤先生は一度咳払いをすると、クラスを見回し、おもむろに、 「急なことですが、最上先生は、先日、ご家庭の事情で退職をされました。2学期から、私がこのクラスの担任になります」 と説明をした。その瞬間、クラス中が騒然となる。 「ええーっ、マジで!?」 「ご家庭の事情って何?」  ざわざわとし出したみんなを見て、安藤先生は再び「ごほん、ごほん」と咳払いをすると、 「静粛に。出欠を取ります」 と言って、名簿を開いた。 「青山」  名前が呼ばれ出したので、一旦静まったクラスメイトたちは、順番に返事を返していく。 (最上先生、まさか、黒川君と別れたから、学校辞めちゃったの?)  私は信じられない思いで、胸の前で手を組んだ。隣の黒川君をそっと覗き見ると、今日も地味系男子モードの彼からは、あまり表情が読み取れない。 (黒川君、どう思っているのかな……)  責任を感じたり、傷ついたりしていないといいけれど、と私は心配になり、そっと吐息した。
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