第一章

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 次の瞬間、視界に映ったのは木目の入った、よく知っている自室の天井だった。明弘の眼球は、現在の状況を理解するためにとどまることなく動き続ける。  しばらくして動きを止めた眼球の代わりと言わんばかりに、激しい鼓動が意識をさらうがそれも時間が経つと治まり、ようやく明弘は体の主導権を手にした。  額を伝う汗をぬぐい、呼吸を整えていると全身が汗で濡れていることに気がついた。  夢、だったよな……?  いまだ混乱する頭の中を整理するために今見た光景を思い出そうとしたが、それは鮮明ではなく(もや)がかかったようであった。  あれは、三郷さん……だったよな。  かろうじて意識のふちにこびりついている映像を見つけ、問いかけるように確かめる頬を一筋の雫が流れていく。手で拭い、それを見つめる明弘。その姿を近くの机に置かれたコップから広がる水滴が映していた。
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