雪女のハンバーグ

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*** 健斗と付き合いだして、もう1年くらい経つ。 今日は健斗の誕生日を祝おうと、私は自分の部屋でキッチンに立ち、合いびき肉を捏ねていた。 あの時健斗が、ハンバーグが上手に作れそうだと言ったせいで、私はそれから暇さえあれば、せっせとハンバーグを作り、おいしいハンバーグを目指して研究を重ねた。 納得いくものが作れるようになった頃、健斗とお付き合いを始めた。 初めて私が作ったハンバーグを食べた時、 「これ、世界一でしょ。」 と嬉しそうに頬張ってくれた。 大袈裟だなーって言いながらも、つい頬を緩ませたら、 「その笑顔も世界一でしょ。」 って、笑った。 私にとっては、健斗の笑顔が世界一なんだけどね。 外では相変わらず、愛想のない雪女だったけど、健斗と一緒にいると、自然とリラックスして明るい表情になれた。 健斗はどんな季節でも、私の手を握ってくれる。 突然触れても、 「ひんやりして、気持ちいいー。」 と頬を摺り寄せてくれる。 私もいつでもあたたかい健斗に熱を分けてもらうのだ。 本当に心地よい場所。 私にとって。 今日は外でお祝いしてもいいかなーと思って、何が食べたいかと聞いたのに、 「ゆめのハンバーグ。」 って即答されたから、こうして肉を捏ねている。 特別料理が得意ってわけじゃないから、せっかくの誕生日なのに、あまり豪華な食卓を整えられないんだけどなぁ……。 成型して、少し休ませている間に、付け合わせのサラダを作ったり、スープくらいはつけようと、ミネストローネもどきを作ったり。 普段はライス派だけど、今日はワインで乾杯だから、近くの評判のパン屋さんで、フランスパンを買ってきた。 チーズも添えた。 ハンバーグを焼きつつ、食卓を整えて……。 ちょうどハンバーグが完成した頃、健斗がやってきた。 「ただいまー。」 当たり前のように言うけど、ここ、私の家だし。 クスクス笑いながら、おかえり、と迎えた。
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