雪女のハンバーグ

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*** 乾杯してワインを一口飲むなり、健斗はハンバーグに手を伸ばす。 また私がクスクス笑っていると、 「だって焼きたてだし、ゆめのハンバーグだし。」 と言って、健斗はハンバーグを口に入れる。 「やっぱ、世界一。」 と健斗は目を細めた。 「私のも半分あげるよ。 誕生日スペシャル。」 私は自分の分を半分切ると、健斗の皿に載せた。 「えぇ? ちゃんと食えよ。」 「健斗が食べてるの見てるだけで、おなかいっぱい。」 正直、ワインとチーズとフランスパンがあれば、それでいい気分だったし。 「まったく……。 まぁ、でも、ありがたく頂戴します。」 健斗が食べる姿をワイングラス片手に、満たされた気分で眺めた。 「そんなにじっと見んなよ。」 「えぇ? いいじゃない。 雪女ですけど、命は奪いませんから。」 健斗はフォークとナイフを皿に置いて、ちょっと真面目な…でも優しい表情を見せて、私を見つめる。 「───”ゆめ”の”ゆ”は───。」 「”雪女”の”ゆ”」 すかさずセリフを奪ってやった。 「違うよ。 俺にとっては……。 ”雪の女王様”の”ゆ”ってとこかな。」 女王様とは、随分位が上がったなぁ……。 「じゃあ、”め”は?」 聞いてみたい気分になって、軽い気持ちで返すと、 「”めちゃくちゃ愛し倒します”の”め”」 と速攻で打ち返された。 「いやいや、ちょっと気障すぎじゃないの?」 照れくさくて、目を逸らしながらそう言うと、向かいから長い腕が伸びてきて、私の手に健斗の手が重なった。 「気障ついでに。 命は奪われないまでも、この手に胃袋を掴まれ、その笑顔に心を奪われてしまいました。 もう離れられません。 責任とって、結婚してください。」 フリーズ。雪女だけに。 「返事が誕生日プレゼントってことでどう?」 健斗の熱で溶かされそうなんですけど? でも、健斗の期待に満ちた目を見たら、頷くしか選択肢なんかないじゃないか。 「多分、一生のうちで一番幸せな誕生日。」 そう言って、健斗は笑った。
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