母親・女王

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とある一日 「おはよう。」 植物の優しいささやきで目が覚める。 花と小動物であふれかえった室内。 そよそよーと風にそよいでいるバラやユリやスズラン。 ウサギの耳がピクピク動いている。 ……かわいい。 「みんな、おはよう。今日も一緒に頑張りましょ。」 かわいいお友達にあいさつしてから、着替えて階下へ。 「おはようございます、女王様。」 「アンヌ様~、おはようございます!」 メイドのヒアと大臣が声をかけてきた。 「おはよう、ヒア。」 男の大臣は無視して、可愛らしい顔立ちのヒアに挨拶した。 大臣が複雑な顔になる。 「あら、メイドの制服にアップリケをつけたの?かっわいいー!」 「えへへ……ありがとうございます!大臣様は、制服にアップリケなんて言語同断だなんて言ってくるんですよー!」 「あら、そうなの?でも、可愛いもの好きな女の子の気持ちが分からない大臣の事は放っておきなさい。」 ますます、大臣が複雑な顔になった。 「女王様、お食事ができております。わたくしとマアでおつくりしました。」 マアちゃんは、最近入ってきたとっても可愛い小動物系の女の子だ。 「あら、ありがとう。まあーーーーーー!!」 テーブルには、目玉焼きを乗せたパンケーキとハンバーグ、サラダを巻いたクレープがあった。 その隣のテーブルにはパンダ柄のテーブルクロスが敷かれ、上には同じメニュー。 しかしパンダ柄のほうはパンケーキの上の目玉焼きが三つあってミッキーマウス型になっており、パンケーキはハート形だった。 そしてハンバーグは大臣がつくったソースがけの楕円形ではなくて、星形と花形の二種類。 サラダ入りクレープの上には、チーズとハムとトマトでつくったウサギの顔。 「こちらのメニューはわたくしが。パンダ柄のほうはマアがおつくりしました。」 いつの間にか来ていたマアが頭を下げる。 「ありがとう!」 私は満面の笑みをむけた。 大臣が頭をさげ、マアはぷくっとふくれる。 私は迷うことなくパンダ柄のほうへ向かう。 マアの顔は明るくなり、大臣の肩が落ちた。 どうやら、私がどちらのテーブルを選ぶか勝負していたようだ。 「このテーブルクロスのパンダちゃん、すごい可愛~い!!ミッキーの目玉焼きも最高!パンケーキがハート型なのも素敵ね。ハンバーグの形もとってもおしゃれ!流石女の子ね。それなのに大臣は楕円形だもの、シンプルすぎてつまらないわ。クレープのウサちゃんも可愛すぎる!!もう実在したらだきしめたいくらい、好きっ!それに比べて大臣はただサラダをつつんだだけなんて……。つまらないわ、つまらない!!ここはマアちゃんみたいに、女の子が喜ぶ一工夫をするのよ。そうじゃないとモテないわ。」 妻子持ちの大臣に説教して、私は朝食にかかった。 「ご馳走様っ!マアちゃん、とっても美味しかったわ。見た目も味も完璧ね。大臣はまだまだだから、たっぷり修行しなさい。」 「アンヌ様はこれからどちらへ?」 「小鳥たちとお喋りした後、お花さんとデュエットするわ。邪魔しないでね。」 最後にハートマークをつけてウィンクをし、部屋を出て花園へ。 「小鳥さ~ん、お久しぶり!」 手を振ると、小鳥たちがパタパタと羽をばたつかせてこちらに飛んできた。 「あ~ん、可愛いよーーっ!!」 人形みたいに可愛い小鳥と戯れた後、ずっと待たされていたお花さんと歌う。 「ふふっ、次は何を歌う?薔薇さんはきれいな歌、ユリさんは静かな歌?鈴蘭ちゃんは可愛い言葉がたくさん入ってる歌ね。あら、マリーゴールドさん、どうしたの?元気な歌がいい?朝顔ちゃんは演歌!?それは困ったわね。意見が分かれてしまったわ。え、私?みんなと歌えるなら、何でもいい!」 楽しんでいると、大臣がやってきた。 「お食事の時間です。すぐお戻りになられてください。」 私は無視。 今の私を動かすには、言葉が足りないわ。 不合格よ。 その後ろから、ヒアがひょっこり顔を出した。 「アンヌ様、お花さんと歌ってたんですか?悪いんですけど、もう食事の時間になってしまいましたの。お食事が終ったら私もご一緒するので、とりあえず来ていただけます?小鳥さんやお花さんもどうぞ。」 「合格!完璧よ!!流石ヒア!!!」 私はヒアを抱きしめる。 「大臣みたいに素っ気なくて小鳥やお花に気を遣わない言い方はダメ!」 ビシッとそう言って、私は食堂に向かい、昼食を食べにかかる。 大臣がつくったシンプルで質素な食事は無視し、マアとヒアが二人でつくったという女子力の高いお弁当風のお食事を完食した。 その後お城で働いている女性を呼んで、花園でパーティーを開く。 夜はマアが作ってきたお弁当を花に囲まれながら食べ、部屋にもどって、小動物を抱きながら花の香りに包まれて眠りに落ちた。 こうして、可愛いもの好きな女王様の一日は終わりを告げた。
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