172人が本棚に入れています
本棚に追加
「可愛いしっぽ・・・。」
「えっ!しっぽ?どこどこ。外に動物でも見えた?」
「雅様。危ないですから。」
クラスメイトの女生徒雅が窓から身を乗り出し校庭を隅から隅まで見回す。その様子をお付きの執事兼クラスメイトの宮城くんが心配そうに見ている。
「ううん。ごめんごめん。昨日帰り道に見た野良猫がすごくかわいくて、思い出してただけなの。可愛いしっぽだったなって。」
その言葉を聞いてそのショートカットでくりくりっとした目の愛らしい顔立ちのクラスメイトは目に見えてズンと落ち込み、ため息をつく。
「動物好きの、特に猫好きの私の前で可愛いしっぽって言葉を発するなんて。桜花もいじわるなんだから。昨日の帰り道か・・・。もしかしたらまだ近くにその可愛くてお腹を空かせた野良猫ちゃんがいるかもしれない。今から、探しに行くぞー。待っててねー。私の子猫ちゃーん。」
「お待ち下さい。雅様ぁ。」
変わり者のこのクラスメイトは落ち込んでいた空気を一変させ足早にその場を去って行った。そして、そのじゃじゃ馬のお嬢様に巻き込まれる形で宮城くんもいなくなった。その騒がしさについ、口走ってしまったことを後悔した。
お腹が空いているなんてどうやったらわかるのよ。
その二人のやり取りが何だか平和で微笑ましい気分になって、また、気になっていた可愛いしっぽに目を向ける。
本当は、しっぽ、すぐそこにあるんだけどね・・・。
最初のコメントを投稿しよう!