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父はママが亡くなってからというもの、色んなビジネスに手を出しては失敗した。私に苦労を掛けさせたくはないからと一発当てようと頑張るがいつも最終的に迷惑をかけられている。その度にお金が底を尽きたからと言い一文も家に入れなくなる。そして、しばらくは日雇いのアルバイトをして食いつなぐ生活が続く。ただし、ママが、私の大学卒業までの学費、そして最低限度の生活ができるように生活費を残しておいてくれたおかげで今はつつましくもあるが、生活はできている。
私はこの生活を今まで辛いとか悲しいとか思ったことがない。寧ろ満足している。私はいい生活がしたいんじゃないのだ。家族で質素でいいから楽しく生活ができればいい。二人しかいない家族なのに常に家に独りぼっちだ。
「パパは家の主失格よ。パパとしても失格だわ。」
深いため息をついて、独り言を言いながら台所に立つ。ここ最近日雇いの肉体労働に励んでいたから、元気が出るものをと思った私は父ために量増しとん平焼きを作ろうと思っていたのだ。人のために料理を作るのは好きだが、自分のためだけに料理を作るのは好きじゃない。
だってさみしさが増すじゃない。
とりあえず、パパはしばらく帰ってこないことが分かったので今日は卵かけご飯にでもすることにした。
但し私は、普通の卵かけご飯では終わらせない。まず、卵とご飯をよく混ぜる。そして納豆を取り出し、よく叩き、自家栽培の葉ねぎを刻む。そして、卵をかけたご飯の上に納豆と葉ねぎをのせ、しょうゆと風味づけにごま油を少々。そして白ごまをかければ、納豆卵かけご飯の出来上がり。
これで、栄養抜群。色合いもきれい。貧乏飯は意外と癖になる。工夫に工夫を重ねれば、おいしくなるし、考え出すと楽しい。
それに食費をどれだけおいしく削れるかが勝負よね。
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