第三章〜万事屋孤離庵〜

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「空間を移動と言ってもどの建物もできるわけではない。この建物は本当に特殊で現世と常世の間にある孤離庵(こりあん)と言う。空間の歪みに奇跡的に留まっているが、これは天様の力があってこそ滞在していられるのだ。何千年も鍛錬してきた天様のお社であるからできるものなのだぞ。万事屋はあやかしからもとても信頼されていて、万事屋の孤離庵と呼ばれている。基本的にはこの建物には他のものは誰も入ることができず、私たちが依頼を受けると出向くことが多い。他の移動手段で行ったならば何時間もかかる所であるが、この手段で行くとなると数十分だ。よって、もうすぐ着くころであろう。」  光秀が懇切丁寧な説明をしていると玄関に着いた。話を聞いていても不思議なものは不思議で、この玄関が妖国とやらに繋がっているようだった。この玄関が私の入ってきた玄関じゃないのがわかったのは、私の靴がどこにも見当たらず、その代わりに私に合いそうなサイズの草履が置いてあったからだった。  それにしても不思議よね。こんなことが現実に起こるなんて。  それに、私が社に入れたのはどういう事なのだろうか。そして、この草履を履くのだろうか。疑問に思っていることを私は生徒会長に聞いてみた。 「これって私はこれを履いて出かけるってことでいいのかしら。ただ、格好がTシャツに短パンなのだけれど。」 「それは、心配いらないよ。」  パチンと生徒会長が指を鳴らすと桜色の可愛い着物に着替えていた。言葉が出ない私にそっと生徒会長は近づき耳元で「きれいだよ」とつぶやいた。その言葉にぼっと顔が赤くなってしまったのは言うまでもない。そして、光秀ににらまれたことも。 「あともう一つ。この外に出たら契約を結んでいるとはいえ、桜花は人間なのだからあやかしに襲われてもおかしくはない。だから必ず私たちの傍を離れないこと。あと、このお面を着けていてくれ。これをしていることで、あやかしたちの目を欺くことができるだろう。約束できるね。」 「わかったわ。あやかしが住む場所ってどんなところなのかしら。楽しみだわ。」  私は布のようなお面を受け取ると、光秀、生徒会長に続くように私はあやかしの町へ繰り出した。
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