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玄関を出るとそこはまるで江戸時代のような町屋が連なっていた。妖国と聞いていたのでおどろおどろしい感じなのかと思っていたが、すごく素敵な街並みだ。提灯に暖簾。商いをしている場所のようで、様々なあやかしが歩いている。色使いがとても艶やかで、色気いっぱいの生徒会長とよくマッチしている。まさに京都の祇園のようで、舞妓さんが出てきそうだ。
「わぁ。素敵な街並みね。あやかしの町と言っていたからもっと不気味なところかと思っていたわ。」
「あやかしだって人間と本質は一緒なのだよ。暗くてじめじめしているところに住みたいものなど一握りさ。ただし、この町は妖国の中でも特に賑やかでね。すべての町がこのように騒がしいところではないのだよ。初めて来たあやかしの町が賑やかなところで驚いたかもしれないが、とてもいい町なんだ。買い物をするのにはここに来れば大概のものは何でも揃う。」
しばらく歩いていると、甘味屋さんに和菓子屋さん。私の大好きな甘いものが連なっている。あやかしの町の食べ物ってどんなものなんだろうと思いながら恨めしそうにお店の前を歩いていると、生徒会長はお店の暖簾をくぐり、私に手招きをした。
「少しだけなら寄り道をしてもかまわないだろう。光、まだ時間はあったはずだな。」
「ここから依頼場所は目と鼻の先ですが、くれぐれも長居はせぬように。時間は私が管理しましょう。」
「光がいると本当に助かるな。」
「そんなめっそうもない。」
光秀は顔を赤くして照れている。私にはいつも吊り上がった目でにらみつけてくるのに、生徒会長にはとても弱いらしい。そんなやり取りをしながらお店に入ると、少し釣り目だが目がくりくりっとして、とてもかわいらしい猫耳の女性がやってきた。
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