第一章〜あやかしと私〜

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 そのいつも助けてくれた母も私が小学生に上がる頃に亡くなってしまった。  病気とは無縁の人だったのだが、突然病気で亡くなってしまったのだ。死ぬときってこんなにあっけないものなんだと幼いながら思った。幼い私はいつでも助けてくれる母という大きな存在をなくして言いようのない不安と寂しさを覚えたのだった。  その母は、このことを予期していたのか自分がいついなくなっても私があやかしに襲われないように色んなことを教えてくれた。  一番の防御策はあやかしに話しかけないことだった。  母が亡くなってからは、あやかしにむやみやたらに話しかけないように努めた。あやかしは自分たちが見える霊力の強い人間を襲ってその力を取り込むらしい。たまに脅かしてくるあやかしもいたが、最初のうちは驚いてしまったり、反応をしてしまい、命からがら逃げてくることがほとんどだったが、不思議なものを見ても驚かず、騒がずできるようになり、その内私はちょっとやそっとのことでは驚かない鋼の心臓を手に入れたのであった。その内、年齢とともに不思議と霊力も上がってきたのか普通のあやかしであれば追い返せるほどの力を持つようになった。  遺伝子様様である。  でもだからと言ってあまりあやかしには関わらないようにしている。母から聞いたことがあるが、人間に化けることのできるあやかしはとても強い力を持たないとその姿を維持することはできないのだという。  もちろん人間の姿でいつも暮らしていて、尚且つどこも指摘することのないパーフェクトなイケメン高校生の生徒会長は、私には狐耳を隠せてないとはいえ、とても強いあやかしに違いない。生徒会長とは常に一定の距離は保とうとしているが、なぜか縁があり、クラスも一緒、生徒会でも一緒、だから、気にしないようにはしていてもどうしても目に入って気になってしまうのだ。
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