第一章〜あやかしと私〜

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「さあさあ。安いよ。安いよ。タイムセール開始だよ。卵一パック十九円。お一人様一パックまで。なくなり次第終了ね。」  よし。今日もドンピシャ。しかも、ちょうど出てくる扉もぴったり。タイムセールは始まる前が勝負だ。  私は悠々と卵のパックを一つ取り、レジに進む。私が卵のカートの前を通り過ぎると、おばさま方の波が押し寄せる。  怖い怖い。今、あの中には入れないわね。本当に昔から感が良くてよかったわ。  無事に会計を済ませると家路に急ぐ。  今日はオムライスにしようかしら。  ただのオムライスではなく、とん平焼きにすれば量も増す。安かったもやしとキャベツを大量に入れればお腹も満たされる。とん平焼きだけれども豚肉は入れずにこのスーパーで無料で配っているあげたまも入れる。  うん。我ながら、良いアイディアね。  毎日の献立を決めることが一番大変だから世の中の主婦の皆さんのことは本当に尊敬してる。そんな大変な作業が今日は早くも終わり、気分良く鼻歌交じりに、家路につくと、築何十年かわからない古びたそれこそ妖怪でも出てきそうなアパートが目に入る。無駄に日当たりは良くツタは伸び放題、壁の塗料は剥がれ、なんとも言えない味がある木造建築二階建て。自分の家ながらいつ見ても妖怪アパートだ。その妖怪アパートの鍵を開け、今日買ってきたものを冷蔵庫に詰めようとしゃがんだとき、小さなちゃぶ台に紙があるのが目に入ってきた。
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