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「まっ。まさか。」
今までの勘から嫌な予感しかしないが、恐る恐るちゃぶ台に置かれているメモを読み上げた。
『桜花ちゃんへ
おかえりなさい。パパは今までにない幸運をつかみました。なんと、今度新しく作られる自然エネルギープロジェクトに携われることになったのです。詳しくは企業上の守秘義務があるので語れませんが、今度こそビックになれるチャンスが下りてきたのです。パパはいつかビックになれる時が来ると思っていましたが今回がそのビックになれる時なのです。ただ、残念なことにその企業に泊まり込みで作業をしなければならないので、桜花ちゃんにはさみしい思いをさせますが、しばらく一人で生活をよろしくお願いします。
追伸 外部に情報が漏れないよう、携帯電話の持ち込みが禁止されています。もし、どうしても連絡が必要になった場合は、どうしようね(笑)パパ頑張ってくるから、桜花ちゃんも頑張ってね~。』
お父さんからの手紙をくしゃくしゃっと丸めゴミ箱に入れると近くにあったタオルに顔をうずめ、息を吸い込んだ。
「・・・。頑張ってね~。じゃなーーーい。いつもいつも変なものに引っかかって。夢だ浪漫だ。ビックになりたい?ちゃんと定職にもつかないで。ママがお金を残してくれたら私たちが生活できているものを。お金だって無限じゃないんだからね。今回だって絶対に失敗しちゃったって帰ってくるにきまってる。あんの馬鹿おやじ。いくつだと思っているんだー。」
妖怪アパートであるため壁は薄く大声は出せないが、一通りいつもの悪口を言い終えると少しではあるがすっきりした気分になった。
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