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“村で一▪二を争う俊足”と謳われ続けておよそ十年。
幼き頃より共に育った友人達に言わせると、
『あいつはくそ真面目過ぎるところがなあー。ほんに、つまらん奴だわ』
『もうちぃーと、話をしたり抜くとこ抜きゃあええのに。遊びに誘っても来やしねえ』
『いくら褌で迫っても、ちぃーともなびかねえしな』
『いい奴だけんど、重てぇ……重たすぎるんだわ。面白くもねぇ』
と、無口なことすら禍するのか、何をやっても呆れられてしまっている。
『だけんど、受けた仕事に間違いがねえのは、さすがおら達【蟷螂連合(とうろうれんごう)】の一番隊特攻隊長だ。トウレンの稲妻の異名は、だてじゃねえ』
『ああ、今の飛脚組合で一番と名高ぇ【蜻蛉会(せいれいかい)】の求愛の矢▪赤蜻蛉(あかとんぼ)、朱音(あかね)が“アタシかアノコのどちらかが一番ね”と実力ば認めとるらしいからな。てぇーしたもんだ』
『他はうすのろ……カス揃いで見なくても目が回るとも言うとったらしいがな』
友として誇らしいと感じ、大きな身ぶり手振りを交えはしゃぎながら語る友人も中にはいてくれ、彼はいつも嬉しそうに柔らかく微笑むのだ。
『朱音先輩は真の漢(おとこ)を決めるガチンコ勝負したいと言ってるらしいじゃねえか。まあ、おめえのことだから面倒くさがって、どうせ受けねえんだろ?』
こくりと恥ずかしげに頷く彼を見て、友人達も『もったいねえな!名を売るええ機会だってのによぉ』と、肩をすくめ何度吐いたかわからない溜め息を吐いた。
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