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「あの頃の俺は、カズの優しさに甘えて、つい他の男とも関係をもってしまって……。
カズのことを、本当に酷く傷付けたと思う。すまなかった! 許してくれ!」
「いや、だから何度も言ったじゃないか。僕は戒里とは友達感覚が抜けなくて、戒里の浮気にも傷付かなかったからこそ、別れを切り出したんだって」
先ほどから感情のままに熱い想いをぶつけている羽崎さんに対し、一臣はいたって冷静で、どこか呆れているようにも見える。
「いや、傷付けたに決まっている!
だって俺の浮気が発覚した数日後、カズの弟が俺のところへ何度も電話を掛けてきたくらいなんだぞ! 兄を裏切るなんてどういうつもりだ、と!
他人には一切興味のなさそうなあの弟がわざわざそんな電話掛けてくるなんて、よっぽどのことだろう⁉︎」
「それについてはこちらから謝罪するよ。うちの弟、僕のことになると少々見境なくなるから」
弟というのは晃臣君のことだろう。
確かに、晃臣君は普段はかなりクールで冷めた感じではあるけれど、俺が一臣を真剣に想っているかとか、裏切らないかとか、凄く気にしていたもんな。
そこまでの電話をしていたということまでは少し意外だったけれど、俺の隣で泉さんが「晃臣は重度のブラコンだからなぁ」と呟いたのを聞いて、ブラコンなら仕方ないと妙に納得してしまった。ブラコンやシスコンの気持ちは、正直、俺も分かる。
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