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次に言葉を発したのは一臣で。
「家賃とかローンとか、そんな真面目に考えないでよ」
「いや、でも……」
「京ちゃんは、僕や涼也に迷惑を掛けているつもりなのかもしれないけど、僕は友達を家に泊めているって感覚だよ。食事だって、せっかく同じ家に暮らしてるのに別々に食べていたら寂しいよ」
「だけど……!」
俺が困っていると、意外にも泉さんが
「じゃあ食費だけ払ってもらえばどうですか」
と一臣に提案する。
「うーん。じゃあそうする?」
「え、ええと……」
「決まりね」
一臣がにっこりと笑う。
柔らかな笑顔なのに、何故かそれ以上は何も言い返せなくなった。
食費だけ、かぁ。もちろん助かるけど、本当にこれでいいのだろうか?
『しばらく僕の家に泊まる間に、僕のこと好きにさせるから』
昨日、一臣はあんなことを言ってきたけれど、俺はきっと、いや絶対に一臣をそういう意味で好きになることは、ない。
そうなると、俺は一臣の厚意をいいように利用しているんじゃないかと考えてしまい、心が痛む。
でもやっぱり金はないし。うーん、どうしたものか……。
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