自分の気持ちが分かりません。

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一臣が、笑わない? 昨日一緒に過ごした一臣は、笑わないどころかずっと笑顔を見せていたと思うけれど。 「一臣さんは、ああ見えて心を簡単に許さない人だからな。紫藤家の名前を利用するためだけに近寄ってくる奴が幼少時代からたくさんいたことが原因らしい。 だから、あの人が心からの笑顔を見せるのは、あの人の家族以外では俺だけだった。 それなのに昨日の一臣さんは、お前に完全に心を許してる状態だった。 ……一臣さんが好きな相手って、お前なんだろ」 「それは……っ」 思わず、分かりやすく狼狽えてしまう俺とは反対に、泉さんは意外にも冷静だ。 「まあ〝忘れられない人がいる〟っていうのは前から聞いていたし、家に友達連れてくるなんて初めてだったからな。すぐにピンときた」 「そ、そうだったんですか……」 すると突然、泉さんが頭をガバッと下げてきた。
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