自分の気持ちが分かりません。

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突然、変なことを聞いてしまったからだろうか。 さすがの矢坂さんも、ぽかんとした表情で目をぱちぱちさせている。 「す、すみません。こんな質問しちゃって……」 「え? あぁ、それは別にいいんだけど……。 うーん、まあ世の中には色んな人がいるからさ、そういうのを否定しちゃいけないとは思うよね」 「で、ですよね」 「けど俺個人的には、ないわーって感じ?」 「え?」 「男とキスしたり、それ以上のことしたりってことでしょ? ないない」 清々しいくらいにきっぱりと否定される。 でも、大半の人がきっと同じように答えると思う。 俺だって、どちらかと言うと矢坂さんと同じような意見なのだから……。 「ていうか北瀬君、そんな質問してくるってことは、もしかして北瀬君ってそっちの人?」 「えっ、違いますよ!」 ーー答えてから、ハッとした。 俺、今……〝そっちの人〟って言われた瞬間、ほぼ反射的に否定してしまった。 自分が〝そっちの人〟だと思われることが、嫌だと思ってしまった……。 一臣や泉さんのことを否定するつもりは全くない。 一臣の気持ちだって、嬉しい。 でも俺は、やっぱり一臣の気持ちには答えられない。そう確信した瞬間だった。
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