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翌朝。昨日よりも早い時間に玄関で靴を履いていると、一臣が首を傾げながらこちらへやって来る。
「京ちゃん? 今日は早いね。もう仕事行くの?」
一臣の質問に対し、俺は「ああ」とだけ答える。
目は、合わせなかった。
「……何か怒ってる?」
伺うように、そう尋ねてくる一臣。
朝食中もほとんど目を合わさず、素っ気ない態度ばかり取っていた自覚は、ある。
「お、怒ってねーしっ」
そのまま飛び出すように家を出た。
駅までの道を歩きながら、モヤモヤするこの気持ちを鎮めようと試みるけれど、上手くいかない。
何だよ、一臣の奴。泉さんと付き合うことにしたなら、朝から俺なんかに構わなくていいのに。
……って、こんな風に考えている時点で、俺……
(これは嫉妬というやつでは……)
いくら認めたくなくても、これだけ自覚があると、もうどうしようもなかった。
男同士の恋愛なんて、何をどうしたらいいか分からないし、興味がある訳でもない。
そもそも、嫉妬してるからといって、一臣のことをそういう目で見ているつもりもはなくて。
……ないけど。
一臣が他の人にキスするのは嫌で。
俺は、もっと一臣と話したくて。
一臣が幸せなら、相手は俺以外の人がいいっていうあの気持ちはーー
今はなくて。
「俺で幸せになれっつの……」
ぽつりと溢れ出た、でも確かな小さな本音。
だから……
他の人に、キスしてんじゃねーよ……
バカやろぉー……。
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