好きだから、好きです。

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すると一臣は。 「真面目な京ちゃんがお酒飲んで帰ってくるとは思ってなかったけど……もし酔ってたら、そういう気分になってる可能性もあるかもしれないと思って」 よく意味が分からず、「そういう気分って?」と俺は聞き返す。 すると一臣は急に俺と距離を詰めてきた。 鼻先が触れるくらいに顔を近付けーー俺が弱い、例の妖艶で挑発的な顔をしてくる。そしてーー 「この後、部屋来ない?」 「へ……部屋?」 それがどういう意味なのか、分からないほど子供じゃないつもりだったけれど、確信出来る程の経験もなかった。 「そ、それはどういう……? あ、部屋で一緒にテレビ観よう的な……?」 「はは、面白い冗談だね」 「……っ」 どうやら、ソウイウ意味で部屋に誘われている、らしい。 だが。 「あ、あの。俺、まだ、そこまでは、気持ちの整理が、あの」 言葉を覚えたてかのようなカタコトで、そのお誘いを何とかお断りする。 キ、キスだってまだ慣れていないのに、ここで部屋なんか行ったら、急展開過ぎる。 一臣は案外あっさりと、 「そっか。じゃあまた日を改めて」 と答えてくれる。 日を改めて……って、いつだ⁉︎ ていうか……普段、何でもない会話をしたりしながら一緒に過ごしているとつい忘れがちだけど……一臣は本当に、俺のこと好きにさせるつもりなんだなあ、と改めて思う。 そして俺も、その気持ちに向き合おうと決めた。でも…… ーー男同士のキス以上の行為。 そればかりは、経験は勿論のこと知識も皆無で、何の想像も出来なかった。 (想像出来ない時点で、やっぱり俺、男の人を好きになるのは無理なのか?) そんなことも考えていた。
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