自分の気持ちが分かりません。

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自分の気持ちが分かりません。

『京ちゃん、可愛いね……キスしよう……』 『あ、一臣……キスは恥ずかし……』 『大丈夫。京ちゃんの唇、柔らかくてとても気持ち良いから……』 『ん……』 ーーピピピピピピピピ‼︎ いつも通りの時間にセットしていた携帯のアラームに叩き起こされ、ガバッと上半身を起こす。 夢から覚醒した俺は、起きて早々、バッと頭を抱えた。 「何っだ、今の夢!」 俺はどうかしてしまったのか⁉︎相手が女の子ならまだしも、男友達相手にこんな夢見るって! いや、昨日一臣が俺に告白してきたからだ!それで、つい! ……でも何で夢の中の俺、まんざらでもなさそうだった⁉︎ ……と、朝から俺の頭の中はパンク寸前。 通勤用のスーツに着替えた後で階段を下りていくと、食堂に人の気配を感じたので顔を出す。 「あ。泉さん、おはようございます」 そこには、一臣の朝食を用意しているらしき泉さんの姿が。 「すっげぇ顔」 俺の顔を見て、開口一番でそう言ってきた。 変な夢で目覚めた俺は、朝からよっぽど疲れ切った顔をしていたのだろう。 「そ、そんな変な顔してました?」 してた。と答えながら、泉さんはスクランブルエッグが乗った皿をテーブルの上にダンッと置く。 そして。 「言っておくけど、一臣さんに頼まれたから仕方なく用意してやっただけだからな!」 と言う。 ……ということは、これはつまり、俺の分の朝食? よく見たら、スクランブルエッグだけでなく、パンにバター、コーンスープなどがーー二人分、並んでいる。 「す、すみません。ありがとうございます」 「一臣さんに頼まれたからだっつってんだろ!」 「は、はいっ。それはそうなんですがっ」 スーツのジャケットを脱ぎながらそんな会話をしていると、食堂に一臣が入ってきた。 昨日と同じく、パリッとしたスーツ姿。 スーツの上着は脱いでいてもキリッとしていて華やかで雰囲気があるのはどういうことなのか。 「おはよう。どうしたの? 朝から盛り上がってるね」 特に気にした様子もなく、笑顔でそう言いながら昨日と同じ席に着く一臣。 別に盛り上がっていたわけじゃないんだけど……。
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