赤い花屋

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「うちのお客に手を出さないでもらえますか。」 「え…?」 今度振ってきた声はさっきの男性ではなかった。 そして私の足も地面についていなかった。 「え?え?え?」 なんかよくわからんけど好きな人に姫抱きしてもらえて千花は幸せです! 怒鳴り散らしていた男性は床でのびている。 何がどうなってるの? その男性の横っ腹を店主が思いっきり蹴っ飛ばし、男性は向かいの路地へ吹っ飛んでいった。 「ええええ!?」 「うるさい。あと、ちょっと太ったほうがいい。」 店主は私を丁寧に降ろし、店の奥へ背中を押した。 「手当するから来て。」 「手当…?」 指差された場所を見ると、腕にははっきりと真っ赤な手形がついていた。 言われるがまま奥へ通され、ハンドタオルに巻かれた保冷剤を渡された。 「痛…っ。」 ズキズキというより火傷みたいにヒリヒリした痛みを感じる。 「ごめんね。」 傷を見つめながら店主は呟くようにそう言った。 「…略奪愛でもしたんですか?」 店主は、ははっと苦笑した。 「違うよ。あれは、副業で出たちょっとした膿みたいなもの。」 「副業?」 私の髪に店主の手が優しく触れた。 店主が私の顔を覗き込む。 「怪我させて、ごめん。お詫びにできる限りなにか…。」 私の心臓はバクバク暴れていたがそれでも頭は冷静だった。 「じゃあ、ここで働かせて下さい!」 店主はぽかんと私を見ていたが、すぐに項垂れた。 「…店番なら、いいか。」 原野千花、花屋さんでバイトすることになりました!
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