売り物と売り方

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売り物と売り方

「てんちょー…暇すぎて死にそうです…。」 「耐えろーそして起こすなー。」 千花です。 無事にこのお花屋さんでバイトをすることになったけど、お客さんはほとんど来ないのですっごく暇です。 しかも店番しかやらせてもらえないからほぼ置物状態で椅子に面したお尻が痛い。 たんぽぽエプロンのイケメンこと店長は日中ずうっと寝ているから話し相手にもならない。 「あーもー暇暇暇あああ!」 「あーあーあーうるさい!じゃあ、店頭近くの花瓶の花変えといて。それ以外は触るな。」 「はーい。」 やっと暇が潰れる! 言われた通り花瓶の花を新しい薔薇と交換する。 ついでに水切りと花瓶の水換えも済ませたらよし完了! また暇になった…。 なんとなしに店内の薔薇に目をやる。 「本当に綺麗な赤ですよね。こんだけ綺麗だと桜じゃなくても死体が埋まってそう。」 「あほか。だいたいそこ土すらねえだろ。」 店長は寝かせろと言う割には最近起きてることが多い。 もしかしてもしかすると私のため!?なんてことはなく働き始めの時にバケツをひっくり返したからだ。 あの時は2人で薔薇を拾い集めて大変だった。 つまり店のために私を監視しているわけだ。 でも!それでも店長に見てもらえるなら嬉しすぎる。 店の奥から店長のイビキが聞こえる。 「毎日徹夜でもしてるのかなぁ。」 「ごめんください。」 待望のお客さんだ! 初いらっしゃいませをかまそうとした私を超した人がいた。 「店長起きたんですね。」 今さっきまで爆睡こいてたのに。 目敏いというか、耳聡いというかなんというか。 「いらっしゃいませ。どうぞ奥へ。」 完璧な営業スマイルで店長は言った。 「買いに来たんじゃないでしょう?」
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