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この話は佳奈と俺との話だ。佳奈と俺とでしか笑えない話だ。
俺は体を起こした。
「あのさ」
「ん」
笑っていた佳奈と目があった。
佳奈の手に自分の手を重ねたが、とっさに引っ込められた。
驚愕の眼差しで見つめられる。
「どうして」
「まだ間に合う?」
「……だって、彼女は」
「別れる」
「そんなの……!」
とたんに堰を切ったかのように彼女の目から涙が溢れてきた。「ずるい」と顔中涙でぐしゃぐしゃになりながら佳奈は俺のことを罵った。
我ながらずるいと思う。
でも、日常の境界はこんなにも簡単に決壊する。
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