境界

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「いつだったっけ? 一年生くらいのころ? ここに泊まりにきたときにさ」  小さい頃は長期休みのたびに泊まりにきたりしていた。 「夏、暑くて夜寝れなくて」  佳奈は何か思い出したような顔をこちらへ向けた。 「涼しいところはないかって、二人で考えて、夜ここの廊下にそのまま寝たことあったよな」 「あったね」  佳奈はしゃがんで俺の顔を覗き込んだ。 「すごい体は痛かったけど、冷たくて気持ちよくて」 「そうそう」 「で、朝になったら涼しすぎて、布団もかぶってないし、パジャマから腹も出てるしで、二人とも風邪ひいたんだよな」 「朝は寒かったんだよね」 「たしか佳奈のおばさん、……いや? おばあさんに?」 「そう! おばあちゃんに、怒られた」  そういうと、ふふっと佳奈は笑った。  その顔を見て、胸が締め付けられる思いがした。  やっぱり手放したくないな、って。
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