境界

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「答えてくれないんだね」  非難めいた台詞に、取り繕うような返答は持ち合わせていなかった。 「ざーんねん」  薄く笑った佳奈に、扇風機の風が髪を揺らす。俺は残っていた麦茶を飲み干した。佳奈は空になった皿をもって台所へ立った。  もうやめた方がいいのかもしれない。  何を? どっちを? 自分勝手に付き合わせるのを?  外を見た。大きな木がある庭だ。昔からあった木だが、さらに年月がたって大きくなった気がする。  もうここへ来ることはないかもしれない、と思ったら急に胸を締め付けられた。この家の縁側は好きな場所だった。
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