境界

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 ちょうど木陰になっており、夏でもそこで遊んだり、何か食べたりしたのが思い出される。座敷から縁側へ移動すると、記憶が蘇ってきた。 ああ、そうだ。この感触。  畳のへりを越えると、足の裏に感じる板の間の冷やっとした感触。 畳とは違う温度差。腰を下ろしてみて改めて感じるひんやりとした感覚は、感慨深いものがあった。  ついそこに、仰向けに体を横たえてみる。背中はゴツゴツと痛いが、扇風機を浴びているより涼しかった。 「わっ、何してるの」  戻ってきた佳奈が驚いた声を上げた。 「あのさ、お前覚えてる?」 「何を?」  立ったまま答える佳奈に対して、俺は寝転んだまま話をした。
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