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お正月スペシャルSS 『深海という……日々』2
「ごめん。Kai……黙っていて」
「大丈夫だよ。でもその代わり、今日は俺の言う事を聞いてくれるか」
優也が安堵したように、ふわりと微笑んだ。俺だけに見せてくれる面映く甘い表情だ。実際には5歳も年上の君だが、今からは俺がリードする。
「うん、僕は何をしたらいい?」
「ただ、ひたすらに、俺に甘えてくれればいい」
そう告げると、優也がほんのりと頬を染める。
「じゃあ……治療して……欲しい」
「了解!엄마 손은 약손だぞ」
「え……それって」
「ママの手は薬の手っていう意味だよ。日本でいうと『痛いの痛いの飛んでいけ』っていう意味と同等さ」
「Kai……それを言うのなら、君の手が、僕にとって『薬の手』だよ。だって君は、僕の心を治してくれたから」
優也がまずは言葉で甘えてくるのが、可愛くて目を細めて、彼の繊細な黒髪を撫でてやった。
「そうだ。それでいい」
腫れた足をしっかり冷やしてやった。
「さぁ治療は完了だ! 俺は次、何をしたらいい?」
「ん、……Kaiの手が、もっと欲しい」
優也が両手を広げて掲げて、俺を招き入れてくれる。
君を深く強く抱いてもいいというサインだ。
「……溶かしてやる。痛みを忘れるほど、甘く蕩けさせてやる……まずは風呂からだ」
控え室内にある風呂場へと、君を横抱きにして連れて行く。それから新しい年を迎えたばかりの君を抱く──
「Kai、今年も……僕を……」
照れ臭そうに俯く優也の顎をクイッと掬って、唇をぴたりと重ねた。優也の唇が、美味しくて堪らない。
「あぁ、沢山愛させてくれ。今年も、来年も……俺たちは、痛みも幸せも、分かち合う存在だ」
「心が軽くなる言葉をありがとう。Kaiがいるから、僕は、もう沈まない」
優也……俺たちにとっての『深海』は、もう『暗い海底』ではないんだよ。
「Kai……君と暮らすようになって、僕の愛は深まるばかり──君が好き過ぎて、その、困っている。こんな風に甘やかされては、抗えないよ。君が欲しくなって……堪らない」
脱衣場で君の衣類を脱がせてやると、君の方から俺に抱きついてくれた。俺が大好きな背伸びのキスもしてくれる。
「ん……っ」
グッと腰に手を回せば、お互いの欲望が存在を増しているのが分かった。
頭上から勢いよく降ってくるシャワーは、俺たちの身体にあたって、華やかに弾けていく。
なんだか新年を祝うクラッカーのように、気分が高揚してくる。
「ん、……触れて、ここに……あっ、うっ……ここも」
「あぁ、でも続きはベッドで。 足に負担をかけたくない」
「じゃあ、早く身体も髪も洗ってくれないか」
「ふっ、煽るな」
「だって……君が早く欲しくて」
それでいい。優也──もっと自分に素直になれよ。
俺たちが泳ぐ海は、深い愛情、深い信頼、深い思いやりが広がる海になった。だからもっと自由に、優也が進みたい方向に泳いでいい。
俺がいつも寄り添うから、大丈夫。
넌 혼자가 아니야.
優也は、もう一人じゃない!
『深海という……日々』了
あとがき(不要な方はスルー)
****
Twitterのタグやペコメで、『深海』のKaiと優也のその後が気になるという嬉しいお言葉を頂戴したので、SSを書いてみました。
お正月のお年玉気分で、楽しんでいただけたら、嬉しいです。
私も久しぶりに彼らに会えて、嬉しかったです。
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