さよならの行方 1

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さよならの行方 1

「えっ……今なんて言った?」 「優也(ゆうや)……だから分かって欲しい」  いつものように(かける)の家で一晩中抱き合って迎えた、気怠い朝のことだった。唐突に別れを切り出されたのは。 「俺さ……やっぱり結婚して子供を育ててみたいんだ」 「……子供って、そんな」 「ごめんっ、実はもう結婚を前提に付き合っている女性がいるんだ」 「なっ」  呆気に取られ何も言い返せない自分に驚いた。  僕たちにはずっと足りないもの、望んでも叶わないものがあった。それは男同士がいくら躰を重ね合わせても、愛の結晶などと言われるものは死んでも手に入らないということだ。  血を分けた子供を持つ。  そんな夢はとっくにお互い捨てたと思っていたのに、そう思っていたのは僕だけだったのか。なんて情けない。 「僕……もう帰るよ」 「えっおいっ優也、ちょっと待てよ」 「もういいよっ!分かったから」  急いで裸の躰にシャツをひっかけて風呂場へ行き熱いシャワーを頭からザーッと浴びると、内股に翔からたっぷりと注がれた生暖かい残滓が垂れて来た。その感触に身震いし風呂場の壁をドンっと叩き、そのまま壁にもたれて目を閉じた。  嘘だ、嘘だろう。  お前が僕を捨てるなんて……信じられない。  だってお前が僕をこんな風にしたのに、今更そんなこと言うなんて。  それだったらお前に抱かれる前の僕に戻してくれよ。  熱いシャワーを顔にぶつけ、悔しくて悲しくて沸き起こる涙を跳ね飛ばした。  泣くな、泣いたら負けだ。  そう思うのに悲しみが心をじわじわと侵食し、僕を地の底へと引きずり降ろそうとしてくる。  僕は……翔の横に並ぶことが出来なくなるのか。  翔の横にはすぐに女性が並ぶだろう。そして奥さんと子供と手を繋ぎ輝かしい未来を歩んでいくのか……僕をここに置いたまま。  じゃあ僕はどうすればいい?  翔なしで僕はどうやって生きて行けばいいのか分からないよ。
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