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季節の番外編♡ハロウィン・ハネムーン 2
「優也、旅行先は日本にしよう!」
「え?どうして……急に?」
「優也は、こっちに再び来てからは、一度も帰国していないだろう」
俺の提案に優也は驚いていた。相変わらず控えめな人だから、いつもあまり自分からやりたいことを言わない。でも俺にはちゃんと分かっていたよ。
久しぶりに帰国して……ご両親やお姉さんに会いたいという気持ちが募っていることを。優也は遅くに出来た子供で、ご両親はもう高齢だ。だから本当はもっと早く帰国させてやりたかった。
「それはそうだが……貴重な休みなのにいいの
か」
「当たり前だ。軽井沢の紅葉も見頃だろうし。ただその前に寄り道していいか。一つだけ俺の行きたい所に付き合って欲しい」
「あぁもちろんだ。それを一番に優先してくれ」
「優也はいつも可愛いよ。優しい気遣いをありがとう」
優也も日本行きを喜んでいるようで、明るい笑顔を浮かべてくれた。あの海の底に沈んでいたような青白い顔の青年はもういない。今の優也は仕事に打ち込む意欲的で健康的な青年だ。共に仕事をしていると、優也も当たり前だが立派な男性であって……女性客と話す様子なんて、さまになっているから妬けるよ。
だが俺の腕の中では永遠に可愛くていじらしい恋人だ。
「Kaiは褒め上手だね。Kaiがいつもそうやって褒めてくれるから、僕は自分に自信が持てるようになったよ」
優也の控え目な笑顔が眩しくて、もう一度抱きしめて唇を重ねてしまった。節操ないと思いつつ甘いキスが止まらない。吐息と共に半開きになった口腔内に舌をさしこんで、深く濃く味わってしまう。
「うっ……ん……もう本当に起きないと」
「あーこのまま昼まで抱きあっていたいよ」
「Kaiはストレートだな。でも求めてくれてありがとう」
優也が俺の背中に手を回し、自らの躰をぴったりと合わせてくれるもんだから、余計にムラムラする!
「優也……ヤバイっ、それ」
「旅行に行ったら、その……Kaiがしたいことを、とことん付き合うよ。さぁ今日はもう起きよう」
俺の頭の中では『とことん付き合う』という言葉が、キラキラ輝きながらグルグルと回っていた。
****
昼まで抱き合っていたいのは僕の方だ。
Kaiの逞しい腕の中は、居心地良すぎるよ。
毎朝の儀式のようなキスとハグの時間が愛おしい。1日の初めから求められている喜びを感じ、生きるエネルギーを分けてもらえる。
Kaiと共に暮らすようになり、僕は本当に健康になった。
心身共に……
「優也。日本のご両親に帰国の電話しておくといいよ」
「そうだね。えっと宿泊は31日? Kaiの用事って日帰りかい?」
「あー軽井沢に行くのは翌日になるかな。いいかな」
「もちろんだよ」
それにしてもKaiの行きたい所って何処だろう?
見当がつかないが、それはそれでミステリーツアーのようで楽しみだ。
彼となら、何処でも……何でも楽しく感じる。
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