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季節の番外編♡ハロウィン・ハネムーン 9
「いい湯だったか」
「うん気持ち良かった。Kaiも一緒に入ればよかったのに」
「いや駄目だ! そんなことをしたら永遠に風呂から出られなくなる」
「え……また君はそんなことを。ここは寺の中だよ、少し自粛しないと」
風呂上がりの優也は上気した肌がしっとりして、いつもより更に艶っぽかった。それに浴衣を急いで着たのか少し着崩れた襟元から、綺麗な鎖骨のラインが丸見えでゾクゾクする。
「俺さ、いつも日本のホテルや旅館に泊まる時、浴衣は、はだけるから苦手だったが、やっとその意味を見出せた!」
「もう……Kaiはいつもそんなことばかり。さぁ早く入ってこないと先に眠ってしまうよ」
「ふーん、優也はこういう時だけは兄貴ぶるよな」
「実際、僕の方が五歳も年上だからね」
優也が肩を楽しそうに揺らした。彼は……いつの間にこんなにも明るい表情で笑えるようになったのか。
出会った頃の優也は、今より内向的でずっと下を向いていた。笑う所など見たことがなかった。いつも無表情で辛そうだった。だから初めて会った時は、無関心な心の冷たい人だと思ってしまった。
だが本当の優也はその真逆だった。名前の通り優しく穏やかな性質だが、親の愛情を真っすぐ受けて育った青年だ。素直で頑張り屋の優也の前では、俺も素のままでいられる。
そんな彼と、今ではこんな風に軽口を叩けるようになったのが本当に嬉しい。だからいつまでも楽しい会話を続けたくなるが……もうそろそろ限界だ。
早くこの窮屈なタキシードを脱ぎたい!
早く優也を抱きたくて、ウズウズしてしまう!
寺の風呂は、純和風の檜風呂で快適だった。
大人の男性二人が横に並べる大きな湯舟に浸かりながら、やっぱり優也と一緒に入ればよかったと思ったが、ここは寺だ。流石に風呂の中で抱くのは駄目だろう。
頬をパンパンっと叩いて、煩悩を追い出した。
「優也……起きているか」
「……」
優也は早朝からのハードスケジュールに加え前の彼との再会もあり疲労困憊だったようで、敷いてあった布団の上に倒れるように横たわっていた。
「あれ? 本当に眠ってしまったのか」
さてと、どうしたものか。朝まで寝かさないつもりだったが、疲れた表情の彼を今すぐ起こして啼かすのは気の毒だと思った。
「少し寝てからにするか……ん? 優也……そうするか」
返事はない。もうぐっすりだ。
俺は優也を一度抱き抱え布団の中に潜り込ませ、そのまま添い寝してやった。
「さっきまで五歳も年上だと威張っていた癖に、こんなあどけない顔しちゃって。少し眠っていいよ。でもあとで必ず起こしてくれよ」
耳元で囁くと、優也も夢の中からコクンと頷き、返事をしてくれた。
しかしなぁ……もうこのまま寝かしてやろうと決めたはずなのに、少し開いた淡い色の唇を吸いたくなるし、しっとりきめ細やかな肌に触れたくなるから、困ってしまう。
まるで煩悩と追い駆けっこをしている気分だ。
しょうがない。羊でも数えるか。
煩悩が一匹……煩悩が二匹……煩悩が三匹……煩悩が……
次第にだんだん眠たくなってくる。
後でな……優也。
必ず君を抱くからな。
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