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その後の二人『春のたより』1
帰国の飛行機で、僕は寂しい気持ちと嬉しい気持ちの狭間にいた。
Kaiくんに会えて嬉しかったのに、その翌日にはもうKaiくんと離れないといけないなんて、寂しすぎる。でもまた会う約束をした。このKaiくんの匂いを感じるシャツを日本に取りに来てくれると約束をした。
それでも贅沢に願いたくなる。いつか僕たちは、毎日会えるようになるだろうか。同じ空気を吸いたい。同じ場所から太陽も月も見上げたい。
朝起きたら横にいてくれて、一緒に朝食を食べて、夜には同じ家に戻り、同じ布団で眠る。そんな毎日が来たらいいのに。
飛行機の振動で機内が上下に軽く揺れると、腰に鈍い痛みを感じた。これは幸せを重ねた回数分の余韻だ。
****
朝になっても僕たちは別れを惜しみもう一度深く抱き合った。最後に部屋に備え付けのシャワールームへ連れて行ってもらうと、Kaiくんもそのまま中に入って来た。
「えっ?狭いよ」
「優也さんはもう疲れているだろう、俺に任せて」
「でも……恥ずかしい」
「いいから、後ろ向いて」
明るい笑顔でそう言われ、たどたどしくKaiくんに背を向けて待った。やがてそっとKaiくんの手が尻を辿り、奥まった窄まりに触れて来て、指先で注意深く中に注ぎ込まれたものを掻き出してくれた。
「んっ……あっ」
冷たいタイルの壁を押している手の平をぎゅっと握り込んで、感じてしまいそうになるのを唇を噛みしめて必死に堪えた。
こんな風に、後処理までしてもらえるなんて。
翔との時はそのまま朝まで放置されるか、自分で疲れ果てた躰を必死に動かし風呂場へ駈け込んだような記憶しかないのに……だらだらと内股を流れる液体がいつも嫌だった。
でも今は違う。
労わってもらっている。
愛してもらっている。
それを全身で感じている。
今回も、最初から最後までKaiくんは僕の躰を気遣い、優しく触れてくれた。
これ以上の恋人がいるだろうか。
優しさに泣けてくるほど、君が好きだ。
****
そしてまだ躰の奥には、Kaiくんの逞しい大きさ自体の余韻も感じていた。
これは僕が彼を忘れたくないから覚えている記憶だ。
やがて飛行機は羽田空港へ定刻通り到着した。
あっという間だったな。もう戻って来てしまった。
そしてまた明日から仕事も母のことも、全部一人で頑張らないといけない。
だからしっかりと気持ちを入れ替えないといけない。
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