美術部での事件

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 その次の朝、ホームルームが始まる前に、私とトビオと阿蛇田の3人が放送で相談室に呼び出された。相談室には警察が来ていた。 「昨日、美術部員の皆さんに聞き取り調査を行った結果、あなたたち3人に再度、お話を伺うことになりました。一人ずつお話を伺います。」  初めに阿蛇田が別室へ呼ばれた。私とトビオは相談室に二人残された。 「君が疑われるとは以外だ。まさにイジメだな。」 トビオはそう言った。私はイジメという言葉の響きに満足した。自分がここへ送り込まれた使命を果たせているのだ。 「僕は、絶対に君はそんなことをする人間じゃないと警察に説明する。心配しなくていい。君が犯人にされるくらいなら僕が罪を被ってもいい。」  トビオめ。本当に困った男だ。何をどう考えれば、そんな判断になる?私はトビオの言葉に反論したかったが、頭が悪く設定されているため適切なセリフが検索できない。 「私は疑われても困らない。犯人にされても、楽しい思い出になる。」 「逮捕されたら、もう学校に来られなくなっちゃうんだよ?わかってるのか?」 「それは困る。」 「そうだろう?君さ、警察に何か聞かれた時、ちゃんと考えて返事しないと大変なことになるぞ。ふざけてる場合じゃないんだ!」 トビオは少し興奮していた。  阿蛇田の次にはトビオが呼ばれた。阿蛇田は相談室は通らず教室に戻ったようだ。私は母親役の職員に連絡したかった。自分の能力だけで適切な返答を用意できるはずがない。私は誰にも断らず相談室を抜け出し、こっそり家に帰った。  話を聞いた母親役の職員は、すぐ警察に電話した。 「娘は不安で家に帰って来てしまったので、これから私がいっしょに学校へ伺います。申し訳ありません。」 とにかく、何を質問されても分からないことは『分からない』と答えるように何度も言われた。
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