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母親役と相談室に入る。三人の警察官がブスッとした表情で私を見る。
「美術部員の何人かが、一連の事件の犯人は、田中ユカリさん、あなたではないかと予想しています。」
私は黙っていた。
「あなたは、美術部に入部してから上級生から陰湿なイジメを受けていましたね?」
「わかりません。」
そんな事実があったのだろうか?どんなことが陰湿なイジメだったのか?私はまるで気付いていなかった。
「あなたの描きかけの作品を隠されたり、描きかけの作品に手を加えられたりしませんでしたか?」
「わかりません。」
「みんなでおやつを食べるとき、あなたにだけ配られなかったり、あなたを露骨に誹謗中傷したりバカにしたりする生徒がいましたね?」
「わかりません。」
私は、そのすべてに気づかなかった。
質問していた警察官は苛立ったように私に怒鳴りつけた。
「自分のことです。しっかり答えなさい。」
「本当に、そんなことがあったかどうか、私はわかりません。わからないから、わからないと答えています。」
私は大きな声で、そう言った。
「お母さん、娘さん、最近何か変わった様子ありませんでしたか?」
警察官は母親に質問した。
「娘の返答がアイマイで申し訳ありません。この子の能力では、そう返事するだけで精一杯なんです。この子は本当に鈍感で、周りでどんなことが起きているか気付かないんです。たとえ悪口を言われても、おやつが配られなくても、描きかけの作品がなくなっても気付かないと思います。」
「普通に受験して、この高校に合格したんでしょう?」
「はい。奇跡的に!」
「わかりました。お母さんは、お帰り下さい。もう少しユカリさんから話を聞きますので・・・」
母親は帰され、私は厳しい口調で質問を受け続けた。
「てんとう虫や魚は、いつどこから運んだのか?」
「ドアについていた血液は自分の血液ではないか?」
「山村トビオと田中ユカリの共犯ではないかと推測する人も多いが、トビオについて何か言うことはないか?」
私はすべての質問に、まともに答えられなかった。
「具体的なことを何も答えないなら、あなたの血液を採取して調べるので、これから病院へ向かう。」
ヤバイ!病院へ行けば私が人間じゃないことがバレてしまう。多分、そうなれば私は即刻、廃棄処分される。仕方がない。プログラミングのミスだ。せめてもう少し、頭が働くように設定すべきだったのだ。
私はパトカーに乗せられ病院へ向かうこととなった。
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