トビオの正体

1/1
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ

トビオの正体

 パトカーで病院の前に到着した時、数人の警察官が走り寄って来て、パトカーに乗っていた警察官に何か耳打ちした。 「田中ユカリさん、あなたの疑いは晴れました。真犯人がわかったのです。大変、失礼致しました。これから学校までお送りします。安心して授業に出てください。」 急に、そんな展開になった。真犯人とは?  4時間目が始まる前の休み時間、教室に戻る。トビオは嬉しそうな顔をして私に言った。 「お互い大変だったな。真犯人は部長だった。阿蛇田に罪をなすりつけようと考えたらしいが。それにしても人騒がせな事件だ。」 「どうして急に犯人がわかったの?」 私の鈍い頭では推察することができなかった。 「どうしてだろうな?」 トビオは無表情につぶやいた。どうしてか知っているのに知らないフリをしているようにも見えた。  家に戻ると母親役は私に報告した。 「トビオの正体がわかった。彼はあなたと同じAI。自殺者が相次いだ高校に文科省が送り込んだスパイだった。けれど、情報によると彼自身は自分がAIであることを認識していない。最先端技術を駆使して昨年、完成したばかりの超高性能の人型ロボット。食料を消化し、大便小便も人と同じように排泄する。体表面近くには血液が流れ、生殖器から射精することも可能。ただし血液や精液の成分は人間とは異なる。彼が送り込まれた目的は、単純にイジメを阻止すること。イジメ及びイジメの可能性という状況を察知すると、ただちにイジメ防止プログラムが発動するように仕組まれている。それで、あなたの存在は、彼にとって『外せない存在』なのだ。この先、あなたの存在意義が失われないための方策は二つ。一つは、トビオかあなたが転校する。もう一つは、あなたのプログラムを全面的に書き換える。これから教育委員会で、その決定がなされる。我々は、決定に従うしかない。」
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!