女子会のイジメ

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女子会のイジメ

 1年生の研修旅行が近付いて来た。2泊3日で山の上の研修施設に行く。6人ずつの部屋割りで、その6人が一つの班となり計画を立て一緒に行動する。  出席番号順に6人ずつに分けられ、初めての話し合いが持たれた。まず班長を決める。  女子バレー部のモモカは、平気でキツイ言葉を使うジコチュー女。  新聞部のサラは、頭が良く落ち着いているが無口。  放送部のアサミは、おしゃべりが大好きなチャラチャラした女。  文芸部のサチコは、何を考えているのか想像できない変人。  陸上部のアメリは、男子にモテたいだけの色気づいた女。  美術部の私は、ブスでダサいモタついた女。  こんな6人の中から班長を決める。 「私は班長やってもいいわよ。」 いきなり、モモカが名乗り出る。 「じゃ、多数決で決めよ。モモカが班長でいいと思う人、手をあげて!」 突如、アサミがそう言った。誰一人、手を上げない。 「誰でもいいんじゃない。別に。ジャンケンで決めよう。」 アメリが提案した。 「それはない。ふさわしい人を選ぶべき。」 サチコが無表情のまま、そう言った。 「ふさわしい人って・・・・どういう人?」 アサミはケラケラ笑って聞いた。サチコは少し考えて 「みんなに平等な人。」 と神妙に答えた。みな、お互いの顔を見合わせ黙り込んだ。 「じゃあ、サラがいいんじゃないの?どうせ、班の報告書とか作るんでしょ。サラ、そういうの得意そうだし。みんなに平等じゃない?」 モモカは、自分が暗黙のうちに非難されていると感じたのか、腹いせに無口なサラを困らせようとしているかに見えた。  ガタンと音をたて、サラが立ち上がった。 「班長になるなら、私、研修旅行、行きません。」 そのまま彼女は教室を出て行った。私はあわてて追いかけた。廊下をかなり進んだところで、ようやく彼女に追いつき声をかけた。 「お願い。戻って。あなたを班長にはしないから。モモカは自分がイライラしているから、ワザとあんなこと言っただけ。私が絶対反対する。今すぐ戻れば、誰も気にしないと思う。戻ろう。」 私はサラと手をつなぎ教室に戻った。途中、無口なサラに 「田中さんの手、不思議な感触。」 と言われショックを受けた。確かに生身の人間とは素材が違う。肌の触れ合いは極力避けたほうが無難かもしれない。  教室に戻った時、私が班長に決定していた。欠席裁判か! 「もう、みんなで決めたから。頑張って。」 いい感じのイジメだ。イジメに合うと使命を果たした満足度のゲージが上がる。人間で言えば、生きがいを感じるようなもの。
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