強制的な華燭の典

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(思ったより良い人かもしんないな……なーんて思わないぞ、私は!) 何しろ父親の嫁さんに騙されて結婚させられる菜乃花である。 「あなたもこの伯爵家の娘、ここで暮らして女学校に行った方が近いし、ぜひいらっしゃい」とか言われ、嫌だなあって思ってるのに母にまで押し切られた。 実際、女学校は近くなったが、嫁に出されてしまった。それじゃあ意味がない。 「女学校に卒業まで居たいなんてどうかしてますわよ、菜乃花さん」 義母は口を押さえながら囁くように言った。 「どんな醜女かと心配になるじゃありませんか。返って経歴に傷がつきますわよ」 「……」 そう、女学校は途中で結婚して辞めるのが普通だった。卒業まで居る子は嫁の貰い手がなかったのだと陰口を言われる。 でも菜乃花は卒業までいたかった。 学校は運動も勉強も楽しかった。 特に音楽と体育が好きだった。歌ったり踊ったり走り回ったり……生き生きとして楽しかった。 (それなのに得体の知れない男と結婚だなんて) いやいや、相手も華族なので、適当なとこの馬の骨どころか、立派な出自だが。 (その割にはなんか扱いがぞんざいな気がするなあ) まあ、何はともあれ、着替え終わったので介添人と大広間に戻ろうと菜乃花は思った。 が。
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