強制的な華燭の典

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「……」 (『花嫁は中座させていただきます』って介添人が言ってたよね) それなのに人の気配がしなくなっている。 (どういうこと?) それでも大広間まで戻ろうと思い、菜乃花は着替えた部屋を出て歩き出そうとする。 と、腕を掴まれた。 (ちょっと待て!花嫁を襲う奴か!?) 中には『初夜権』を持つ輩もいる。 『初夜権』とは、新郎新婦が経験不足だろうから、新妻の処女をあらかじめほぐしておこうという権利を持つものだ。 単に初モノが好きというオッさんが高い金で買っていたりする。昔はヨーロッパの教会が関わっていたというのだから、オトナの考えることってエグい。そしてこの場合は『合法』なので、処女性は保たれたままという設定になり、不貞を働いたことにはならない。 なんでこんなことを菜乃花が知ってるかというと、菜乃花はカトリック系女学校に通っており、英語 フランス語 ドイツ語と多言語をまなんでいる。そして花街の出身である。更に本人が耳年増でそういう本を見るのが好きだったからだ。 が、実際に気持ち悪いオッさんにいきなり撫で回されるのはごめんだ。 「てえええいっ!」 美しいブルーのドレスを着たまんま、菜乃花はそのおっさんに飛び蹴りをしようとした。
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