強制的な華燭の典

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「お手柔らかに」 飛び蹴りをかまそうとしたが、ロングスカートで裾を軽く持ち上げていたその手を、男が軽く取った。 おっさんではなく、それなりに若い。そしてこのビブラートの聞いた美声は聞き覚えがあった。 (新郎じゃん!) 『初夜権』どころではなく、ガチで初夜をこれから迎える新郎だ。 「いきなり激しいので驚きましたよ」 全然驚いていない声で新郎は言う。菜乃花は上目遣いで新郎の顔を見ようとした。 (あの大型サルの息子だから、やはりサルなのか?!) 菜乃花は願っていた。 (サルだろうがキジだろうがイヌだろうが結婚させられたからには旦那だが!桃太郎であってほしい!) が、菜乃花は新郎の顔を見て「桃太郎じゃあないじゃん……」と力が抜けた。 ヘロヘロっと腰が抜けそうになる。足がたわんで床に沈みそうになった。 が。
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