54人が本棚に入れています
本棚に追加
その菜乃花の躰をいともたやすく新郎は抱きとめた。身体を密着させるのではなく、軽く腰から背中にかけて片手を添えただけだ。
(そこそこ細身の体躯なのに、腕の力や体幹は相当鍛えているはず)
骨格マニアな菜乃花はフンフンというように新郎を分析している。
(よし、勇気を出して顔も真剣に見なければ)
何しろゴリラでもなく桃太郎でもないことが判明された。
むくけき大ザルでもなければ健康優良児でもない。
背は高く、黒いスワロウテイルを着ている。上目遣いでちょっと顔を見てみた。
(……綺麗な瞳)
漆黒の濡れた眼差し……だが、それは片目だけだった。
(ああ、これが潔子が縁談を断った理由か)
最初のコメントを投稿しよう!