強制的な華燭の典

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その菜乃花の躰をいともたやすく新郎は抱きとめた。身体を密着させるのではなく、軽く腰から背中にかけて片手を添えただけだ。 (そこそこ細身の体躯なのに、腕の力や体幹は相当鍛えているはず) 骨格マニアな菜乃花はフンフンというように新郎を分析している。 (よし、勇気を出して顔も真剣に見なければ) 何しろゴリラでもなく桃太郎でもないことが判明された。 むくけき大ザルでもなければ健康優良児でもない。 背は高く、黒いスワロウテイルを着ている。上目遣いでちょっと顔を見てみた。 (……綺麗な瞳) 漆黒の濡れた眼差し……だが、それは片目だけだった。 (ああ、これが潔子が縁談を断った理由か)
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