強制的な華燭の典

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菜乃花好みの細身の体躯と涼しげな顔立ちをしている。そしてそこはかとない色気があった。それに身長も高く、手足も長い。日本人離れをしていた。甘く清しい空気すらまとっている。 「もう披露宴は終わった」 転がるようなビブラートの効いた美声だった。深いバリトンだ。滑らかでよく響き、腹筋が効いている。 菜乃花はイギリス系の教育を受けていたために洋風のものを好んでいた。なのでこの新郎には心底安堵した。 が、この結婚のせいで、大好きだった女学校を辞めなきゃいけなかったのは辛い。 それを思い出しながら「このドレスになぜ着替えたのですか?」と聞いてみた。 華燭の典の中途退場だと思っていたのに、お色直しではなく、客は帰ってしまった。 「客に見せないのならば、服飾は必要ないのか?」 揶揄するように新郎は菜乃花に言った。 「君がこのドレスを身につけてる様を見たいのは、この俺だ」 艶っぽい声で囁かれた。菜乃花の背中がゾクゾクとした。
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