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(っていうか漣磨っていう名前だったのね)
菜乃花は今更新郎の名前を知った。
そして改めて新郎の顔を盗み見る。明るいところで眺めてみると新郎は﨟たけていて美しかった。
「お父様お母様」
新郎である漣磨は丁重に頭を下げる。
「本日は私どものために盛大な祝いの宴を開いていただき、誠にありがとうございます」
しかし漣磨と似ても似つかぬ父親と母親は「そうか」という程度でそっけないものだった。
(この親子……)
菜乃花は察した。
(この親子……うまく行ってない)
が、だ。
菜乃花はあくまでも新郎の嫁だ。そして二条家の娘である。立場を常に考えている。
破天荒なおてんば娘ではあるが、母親は元士族だ。みっともないことをすれば親が笑われる。
「いく久しゅうよろしくお願いいたします」
それはそれは丁寧に菜乃花は頭を下げた。
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