《遺書》

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《遺書》

(ごめんなさい、あずまさん少しだけ!) あずまの真意を知る為、その手紙をそっと取り出して開く。 『お手間をかけさせてすみません。 私はホームレスで天涯孤独です。身内を探す必要はありません。引き取り手もありません。すぐに焼いてください。もし私の身体が献体になるなら提供します。 財産になるものは持っていません、マイナスもありません。持ち物は破棄してください。 でも、叶うことなら、持ち物の中にある歯ブラシを一緒に持たせてあの世へ送っていただけたら嬉しいと思います。優しい方から戴いた大切なものです。 よろしくお願いします。 鼓按司眞。』 「あずまさん…」 まるで遺書だ。 こんなもの書いて… 俺があげたぼろぼろになった歯ブラシを持って行くって? あずまさん… 何言ってんだよ。 その文面を見ると、切なさが沸き起こって胸が締め付けられる。 死ぬ前からこんな寂しいこと書くなよ… 絶対一人でなんか死なせない、寂しい思いなんかさせないから。 そっと手紙の下の方に電話番号と名前を書き加え、この方に何かあれば必ず連絡ください。鼓按司眞を大切に思う者です。 と添え足した。 鞄を元に戻し、再びベッド脇に戻る。 (あずまさん…) 今日は悪夢にうなされることなく、ぐっすり眠っている。 体調も心配だし、ゆっくり休ませたい。 起きたらまた気を遣って色々考え始めるだろうから。 さっきの手紙のことも含めて、あずまを幸せにしてあげたいと、改めて誓う敬大だった。
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