《一週間後》

1/1
95人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ

《一週間後》

それから一週間、あずまは医者に処方された薬を内服し、敬大の家で療養した。 無理することもなく過ごせたお陰で咳も治まり、体調もすっかり良くなった。 敬大付き添いで病院へ再診に行って、血液検査の結果を聞いた。栄養失調、貧血、脱水症状は見られたけれど、重大な感染症などは見つからなかった。 薬が効いて咳も治り、医師からは引き続き、水分と栄養を摂るように言われ、治療は終わった。 「……」 敬大くんは医療費がどれだけいったか、教えてくれない。 知ったからと言って到底払えるわけもないのだが… また空き缶集めで金を貯めて千円ずつでも返して行くしかないか… 二人並んで病院から歩いて帰る。 「あずまさんの病気、酷くなくて良かった」 「本当にありがとう」 お陰で体力も戻って、少しくらい動いても息が切れることはなくなった。 「元気になったお祝いに今日晩飯はラーメン食いに行きましょうか」 「ラーメン…」 「三年前約束したでしょ、覚えてます?今度は自分で食べたいやつ決めてくださいね」 「え、それは…」 もちろん覚えている、ラーメン屋に行ったのは、敬大くんが連れて行ってくれたあの時が最初で最後のことだから。 金もないのに食べたいものを選べる身分じゃない… 「決めるまで今回は待ちますからね」 「…わざわざ高いものを食べに行かなくても」 「お祝いって言ったでしょ、祝わせてください」 というかラーメンは高いものの部類には入らないはずだけど。 遠慮するあずまの肩に優しく触れて、俯く顔を覗き込み、そうお願いしてみる。 「……ありがとう」 申し訳なさそうに小さく頷いてお礼を言うあずまは、抱きしめたくなるくらいかわいい。 「よかった」 その衝動を抑えながら微笑む。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!