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《一週間後》
それから一週間、あずまは医者に処方された薬を内服し、敬大の家で療養した。
無理することもなく過ごせたお陰で咳も治まり、体調もすっかり良くなった。
敬大付き添いで病院へ再診に行って、血液検査の結果を聞いた。栄養失調、貧血、脱水症状は見られたけれど、重大な感染症などは見つからなかった。
薬が効いて咳も治り、医師からは引き続き、水分と栄養を摂るように言われ、治療は終わった。
「……」
敬大くんは医療費がどれだけいったか、教えてくれない。
知ったからと言って到底払えるわけもないのだが…
また空き缶集めで金を貯めて千円ずつでも返して行くしかないか…
二人並んで病院から歩いて帰る。
「あずまさんの病気、酷くなくて良かった」
「本当にありがとう」
お陰で体力も戻って、少しくらい動いても息が切れることはなくなった。
「元気になったお祝いに今日晩飯はラーメン食いに行きましょうか」
「ラーメン…」
「三年前約束したでしょ、覚えてます?今度は自分で食べたいやつ決めてくださいね」
「え、それは…」
もちろん覚えている、ラーメン屋に行ったのは、敬大くんが連れて行ってくれたあの時が最初で最後のことだから。
金もないのに食べたいものを選べる身分じゃない…
「決めるまで今回は待ちますからね」
「…わざわざ高いものを食べに行かなくても」
「お祝いって言ったでしょ、祝わせてください」
というかラーメンは高いものの部類には入らないはずだけど。
遠慮するあずまの肩に優しく触れて、俯く顔を覗き込み、そうお願いしてみる。
「……ありがとう」
申し訳なさそうに小さく頷いてお礼を言うあずまは、抱きしめたくなるくらいかわいい。
「よかった」
その衝動を抑えながら微笑む。
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