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ニ年後
人ごみの中を私は歩いてる。以前よりも深く深くキャップを被って。
交差点でチカチカと表示される広告は、明日から開催される『世界のヴィーナス展』のもの。と言っても、展示されるヴィーナスはギリシアのヴィーナス像じゃない。
「会長!!居ました!ヴィーナスさんです!」
よく通る団員の声であたりの人ごみがパッと色めき立つ。
「お前ら丁重に英雄をお迎えしろ!世界を救ったヒーロー、いやヒロイン様だぞ!」
「明日の開会式用の挨拶をひとつどうかーー!!」
「ヴィーナス様!サインお願いできますか?」
「これがあのドラゴン一撃粉砕のヴィーナスか......。初めて生で見た」
「マジ卍〜」
やっぱり、私に人ごみは似合わない。私は新しくなったロッドを握りしめる。
『変身!』
翼を生やして宙に浮いた私を見て、最早辺りはスターイベントのような狂乱だ。
『明日からは大人しく展示されてやるんだから、今日くらい自由にさせなさい!いいわね!また明日よ!!』
明日世界が終わらない日も悪くない。
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