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カウンターの近くに申し訳程度に付いているテレビからはニュースが流れており、明日の世界が終わり方についてタレント上がりのキャスターが一生懸命に解説していた。
「その......本当なのかねぇ、明日が来ないっていうのは」
おばちゃんは誰かと話していないと不安なのか手元のグラスを拭きながら私に話題をふる。手に持ったアイスティーの氷が移動するカランという小気味の良い音を聞いた後に、私は頷いた。
『今日にでも宇宙人からの怪物が来て明日の日付が変わる頃に滅んでしまうそうよ。予告状にもそう書いてあったわ』
3ヶ月前、全世界は混乱にあった。日本時間の5月15日15時15分、突然何者かに電波をジャックされテレビやスマホなどの電子デバイスが一面ショッキングパープルに彩られた。
白の文字で次のような予告がされる。
『自分達は高位の宇宙人である。地球人のテスト期間は終わった。このエリアを8月31日でクローズする。我らのシモベが最後の日にこの空間を閉じに来るだろう』
多くの人が悪戯だと思った。愉快犯がテロリストの仕業だと。
「それは今もニュースでやってるけどねぇ、何も変わらないいつもみたいな日じゃないか。こんなに晴れていい天気なのに、明日が来ないなんて信じられるかい?」
残念ながら私個人の感覚で言うならば信じられた。私はこの世界がどんなに脆い均衡でできているかをよく知っている。
あの風にそよぐ向日葵だっていつ見られなくなったっておかしくないほどの奇跡なのだ。誰も気にはしないけど。
そのとき、ふっと周りが暗くなる。
「おや、まぁ」
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