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ーー1年前。
魔界の蓋が開いて日本中に魔物が溢れた。その時、天体の神々に呼ばれて私たち7人は魔法少女になった。
太陽と力の象徴で明るく元気なソール
月と知性の象徴で冷静かつ大人しいルーナ
水星と商いの象徴でお金に厳しいメルクリウス
木星と恋の象徴で恋愛の達人のユーピテル
火星と戦いの象徴で喧嘩っ早いマールス
土星と農耕の象徴でおっとりしたサトゥルヌス
そして、金星と美の象徴の私、ウェヌス。親しみを込めて仲間からはヴィーナスと呼ばれていた。
懐かしくて思い出したくない記憶。
おばちゃんは1年前のあの事件を思い出したのか俯く。
「あのときは可哀想なことをしたよ。2人の若い子を失くした上に、1人の女の子を傷つけてしまったんだ」
結論から言うとあの戦いに私たちは勝った。長くて緊張感のある1ヶ月と栄光のある勝利だった。女神から授かった変身アイテムと魔法で魔物は全て撃退し、民間人に死者は1人も出さなかった。
しかし、戦いの3日後に太陽のソールは助けた民間人の男に刺され殺されてしまう。
ソールが彼を助けた際に彼は不幸にも怪我を負い、それを逆恨みしてとのことだった。
そんな理不尽なことがあっていいものか。
繊細な文学少女、月のルーナはその訃報を知り「こんな世界を救うべきじゃなかった」と遺書を残し自害した。
そして私は戦いの最中に魔物に火の玉を浴びせられ、回復できずに頭からおでこにかけて酷い火傷を負っていた。火傷を負ったヴィーナスは美しさの象徴にはなり得ないと、心無い人達は私を責めた。
私は魔法少女をやめた。
群衆の人々が、何も責任もない存在が私たちを苦しめるのなら、私だって人ごみの中の1人になってやる。
ヴィーナスは死んだ。
殺したのは紛れもなくこの世界の人たちだ。
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